全順序可換群の部分整列集合について
(Λ,+,≤) を全順序可換群とする。
すなわち Λ は + について可換群であり、≤ について全順序であり、 ∀a,b,c∈Λ に対して a≤b⟹a+c≤b+c を満たすものとする。
定理1
A,B⊂Λ が ≤ について整列集合のとき、 A+B={a+b∈Λ∣a∈A,b∈B} もまた ≤ について整列集合となる
証明
A+B のある部分集合 X が最小元を持たないと仮定する。
このとき、X の減少列 x1>x2>... がとれる。
このとき、対の列 (Ak,ak,bk,nk)k∈N を、帰納的に以下のようにとる:
k = 1 のとき
A1={a∈A∣∃b∈B,∃n∈N,a+b=xn}
a1=minA1 とし、 a1+b1=xn1 となるように b1,n1 をとる。
k > 1 のとき
Ak={a∈A∣∃b∈B,∃n>nk−1,a+b=xn}
ak=minAk とし、 nk>nk−1,ak+bk=xnk となるように bk,nk をとる。
以上で列 (Ak,ak,bk,nk)k∈N をとることができた。
次に、 ∀k∈N に対し nk<nk+1,ak≤ak+1,bk>bk+1 となることを示そう。
まず Ak+1 の定義から nk<nk+1 となることがわかる。
これにより、 Ak⊃Ak+1 であることがわかる。従って ak+1≥ak
これと xk>xk+1 より
ak+1+bk≥ak+bk=xk>xk+1=ak+1+bk+1
従って
ak+1+bk>ak+1+bk+1 となり、 bk>bk+1 となる。
以上から、B の無限減少列 b1>b2>... が取れてしまった。これは B が整列集合であることと矛盾する。□
定理2
Λ+={x∈Λ∣0≤x} の部分集合 A が ≤ について整列集合のとき、∑A={a1+⋯+an∈Λ∣n∈N,a1,...,an∈A} もまた ≤ について整列集合となる
証明
∑A が無限減少列 a(1,1)+⋯+a(1,n1)>a(2,1)+⋯+a(2,n2)>...>a(k,1)+⋯+a(k,nk)>⋯ を持つと仮定する。
先の定理1より、必要なら適当に部分列を取ることで n1<n2<⋯ となるようにする。
また + の可換性から、すべての k に対し a(k,1)≥a(k,2)≥⋯≥a(k,nk) となるようにする。
次に、以下のようにして帰納的に ∀k∈N に対して bk,ik,jk を定義する:
- j1=1, b1=min{a(i,1)∣i∈N} とし、b1=a(i1,1) となる i1 を選ぶ。
- {i∈N∣i>i1, a(i,j−1)≥b1, a(i,j)<b1} が無限集合となるような j のうち最小のものを j2 とする。
- これが存在することを示しておく。∀i>i1 に対し、まず b1 の定義から、a(i,1)≥b1 であり、次にもしすべての j に対し a(i,j)≥b1 ならば a(i,1)+⋯+a(i,ni)≥nib1≥n1b1≥a(i1,1)+⋯+a(i1,ni1) となり、a(k,1)+⋯+a(k,nk) が減少列であること及び i>i1 と矛盾する。
- また、そのような j は ni1 未満でなければならない。もし ∃j≥ni1 a(i,j−1)≥b1, a(i,j)<b1 であったとすると、a(i,1)+⋯+a(i,ni)≥a(i,1)+⋯+a(i,j−1)≥(j−1)b1≥ni1b1
≥a(i1,1)+⋯+a(i1,ni1) となり、矛盾する。
- 以上から、∀i>i1 2≤∃j<n1 a(i,j−1)≥b1, a(i,j)<b1 がわかる。よって 2≤j<n1 のいずれかは上記の集合が無限集合となる。
- i2 を min{a(i,1)+⋯+a(i,j2−1)∣i>i1, a(i,j2−1)≥b1, a(i,j2)<b1} を与える i とする。これは定理1よりA を j2−1 個足した A+⋯+A が整列集合となることからとれる。
- b2=a(i2,j2) とする。 b2<b1 である。
- {i∈N∣i>ik, a(i,j−1)≥bk, a(i,j)<bk, ∀l<k a(i,jl+1−1)≥bl, a(i,jl+1)<bl} が無限集合となるような j のうち最小のものを jk+1 とする
- ik+1 を min{a(i,1)+⋯+a(i,jk+1−1)∣i>ik,∀l≤k a(i,jl+1−1)≥bl, a(i,jl+1)<bl} を与える i とする。
- bk+1=a(ik+1,jk+1) とする。
- これらが well-defined であることと、 bk>bk+1, jk<jk+1 を帰納法で証明する。
- 帰納法の仮定から、 ∀l<k に対して a(i,jl+1−1)≥bl, a(i,jl+1)<bl となるような i は無限に存在する。このような i に対し、まず a(i,jk−1)≥bk−1>bk である。次に任意の j に対して a(i,j)≥bk−1 だったとすると
a(i,1)+⋯+a(i,ni)
≥a(i,1)+⋯+a(i,jk−1)+(ni−jk+1)bk
≥a(ik,1)+⋯+a(ik,nik) となり矛盾する。
- また、そのような j は nik 未満でなければならない。もしそのような j が nik 以上であったとすると、
a(i,1)+⋯+a(i,ni)
≥a(i,1)+⋯+a(i,j)
≥a(i,1)+⋯+a(i,jk−1)+(j−jk+1)bk
≥a(ik,1)+⋯+a(ik,jk−1)+(nik−jk)bk
≥a(ik,1)+⋯+a(ik,nik) となり矛盾する。
- 従って jk<j<nik のうちのいずれかは上記の集合が無限集合になり、jk+1 は well-defined である
- また、定義より bk+1=a(ik+1,jk+1)<bk である
以上で A の無限減少列 b1>b2>⋯ が取れてしまった。これは A が整列集合であることと矛盾する。□